熊手かき

読書好きの日常

本を読むことは映像を取ることに似ている

 胸が痛い。抉られるように痛い。『少女葬』を読んだ。ヒリヒリする。結果がわかっているから、どう転がるのか、どう巣立つのか、そればっかり考えてた。2人の人生はちょっとした選択の違い。それが生死を分つなんて誰が思うか。胸が痛い。

 心を休めたくて『古都』を読み始めた。別の意味で胸が痛くなった。初めて『古都』を読んだ時、わたしは祖母の永代供養のために京都に行く新幹線の中にいた。父親は国を超えて出張中。母親と弟とわたし。家族3人の旅行。車中で読んだ『古都』はわたしの心を掴んで離さなかった。京都では「あー、ここがあの場面の場所か」とずっと思っていた。優しくて楽しかった思い出。

 その思い出が蘇ってきて、昨日までのささくれだった心に柔らかに落ちてくる。今だってささくれている心にふんわりと雪みたいに落ちてくる。泣きそう。泣きそうだよ。つらいよ、本当につらいよ。綺麗な文章が心に滲みる。涙が出そうで止まらない。

 本を読むって心を使う。描写を脳内イメージして映像にするから心を揺さぶられる。ぐしゃぐしゃになる時もあれば、ほんわかする時もある。読むのはやめられない。わたしは読書しながら映画監督になるのか、そうか。なんで面白いんだろう。