熊手かき

読書好きの日常

あの日のあの映像を忘れない

今週のお題防災の日

 3.11。わたしは会社にいた。他部署の一行はあの時間ゆりかもめに乗っていたらしく、徒歩で駅まで行ったんじゃないかと大騒ぎになった。剥がれたトイレの壁を見たとき心底恐ろしいと思った。

 あの日の映像をわたしは生涯忘れないんだろうと思う。津波で流されていく家や車。わたしは体験はしていないけれど、ずっと見ていたあの映像は頭から離れない。会社の工場が福島にある関係で、すぐに物資を本社から工場に運んだ。わたしはあのとき、原発の近くの学校の仕事に携わっていた。何度か打ち合わせして聞いていた学校がもう近づけない場所なんだと知ったとき、かなりショックだった。しかも、福島の営業マンが打ち合わせに行く予定だったのだとあとから知って不幸中の幸いだと思った、不謹慎ながら。

 あれから数年。耐震補強工事や災害復興の工事の仕事を受けてきた。福島、仙台に行って現実も見てきた。福島の農家の努力も垣間見た。少しずつ、依頼内容から復興という文字が消えてきたけれど、今でも昨日のことのように思い出す。体験していない者が何を言うかと叱られるかもしれない。偽善者と言われるかもしれない。でも、わたしは未だに津波の映像が見られない。エヴァンゲリオン劇場版を旦那と2人で見ていたけれど、途中で絶望のあまり見られなくなった回があった。何話目だろう。旦那から「このあと津波のようなシーンがあるからあそこで見るのやめてよかったんだよ」と言われたのを忘れない。

 防災の日。わたしは電車の中で、避難訓練を体験した。ただ、駅に止まっていただけだけれど。この訓練が意味はあっても必要のない時間が長く続けばいいと思う。今はたっくんという存在もいる。あんな怖い思い、しないで済むならしないほうがいい。あの日がなければ旦那と結婚していなかったとは言っても、あんな日なんて来なければよかったとは心底思う。時間が癒してくれないこともあるんだ。

 いつかあの途中のままになってしまった学校に行ってみたいと思います。あの日、みんな逃げられたらしいよと教えてもらったあの学校。いつか、またあの続きの仕事の依頼がきたらわたしが担当したい。それでわたしの3.11がようやく終わる気がします。今はただそう思う。