熊手かき

読書好きの日常

精神科は最後の砦

 思いの丈を吐いてきた。精神科の担当医は若い先生で、初めて会った時頼りなさそうって心底思った。今日だって半分くらいそう思ってた。最初の担当医の先生の名前が診察室の前に書いてある。みて欲しいのはこの先生なんだよなって思いながら呼ばれて入った。全て話す。溢れるように言葉が出てくる。全てを聞いた後、先生は一言「それは大変でしたね」と言ってくれた。社会人経験の浅い、会社に入っていない、結婚も子育てもしていない。そんな先生にどこまで理解できるのか。そう思った。先生は静かに「休んでどうにかなりますか?」と聞いてきた。正直に言うと何度も休職から復帰した経験はあるけど、今回はちょっと違う。復帰出来なさそうな気がしてそう伝える。「僕も休むのは違うと思います」と返される。じっくりと言葉を選ぶ先生。「気分の浮き沈みが軽くなるお薬がありますよ」そう言ってお薬辞典を開く先生。思わず「助けてください」そう言ってしまう。涙が流れる。先生は静かに見ている。静かな時間。話し続けたい気持ちを抑えて待っているわたし。カウンセラーの見立てもお話しする。「でも、直接会ってないから、精神科の先生のお話を優先してくれと言われました」そう言うと苦笑いする先生。流れる沈黙。

 「薬を出してください」そうお願いした。先生は静かに「わかりました」と言ってくれる。「また2週間後にお話ししましょう」そう言って薬を探してくれた。こんな症状は初めてで戸惑うわたしは先生にこう言った、「治りますか?」と。先生は静かに、でもはっきりと「治ります。理由も明確ですし大丈夫です」と請け負ってくれた。何度も何度も「休みたくなる気持ちはわかります」と相槌を打ってくれる。会社にどう伝えればいいか聞いたわたしに「診察を増やして、薬も増やしましたでいいです」と言う先生。ありがとうございますと言って診察は終わった。

 わかってる。精神科医は否定しないで聞くことが仕事。黙って聞いてるのが仕事。それからアドバイスをしたり、ちょっと痛い話をしたりするのが仕事。でも、今日ほどそれで救われることもあるんだって思ったことはない。いつもはすぐ終わる診察も今日は30分話していた。こんなに話したの初めてかもしれない。あんなに頼りないと思った先生が心強かった。ありがたい。今日から薬が増える。それで楽になるといいな〜。2週間、それで耐えきれば継続だし、ダメなら薬を変えるだけ。最悪休めばいい。ただの気休めでもいい。寄り添ってくれる人がいるとわかるのは嬉しい。精神科は最後の砦。そう思った。