熊手かき

読書好きの日常

書を読むということ 「トラウマ映画館」

 読了しました。古い映画は中々お目にかかる機会がないのでこの本に書かれた映画はほとんど見たことがない。というか、もうほとんど見ることがない映画ばかりです。著者自身もアメリカでDVDになったものを再度観たとあるので、日本ではもう見ることができない。どう責任を取ってもらおう。

 収録作品を列挙します。バニー・レークは行方不明、傷だらけのアイドル、裸のジャングル、肉体の悪魔、尼僧ヨアンナ、不意打ち、愛と憎しみの伝説、悪い種子、恐怖の足跡、コンバット 恐怖の人間狩り、早春、追想、戦慄!昆虫パニック、去年の夏、不思議な世界、マンディンゴ、ロリ・マドンナ戦争、ある戦慄、わが青春のマリアンヌ、妖精たちの森、かもめの城、かわいい毒草、マドモアゼル、質屋、眼には眼を、愛すれど心さびしくの26作品です。基本はその作品について著者の分析やその当時の思いを書いていますが、近年製作され現在も観ることができる作品にリンクさせた分析もあるのでとてもわかりやすいです。そこはネタバレではあるけれど、まぁ、もう手に取れない作品ということで許されるかなと。

 今映画を放送する番組はあるけれど、古い作品を放送する番組は限られている。午後ローと深夜の映画番組くらいか。それでも、ここに出てくるような露骨な差別作品や猟奇性の高い作品は滅多に放送されない。猟奇であっても作品性が高ければ放送される可能性はある。でも、この本の中の作品は酷評された作品もあるのでまず観ることは難しい。そんな作品を著者の幼い時代は当たり前のように流していた。それを許す土台があったのか、ただ単に緩かったのか。羨ましくて仕方ない。正直な話、幼い私の心にトラウマを残した映画があるだろうかと思い起こしたけれどない。ホラーならあるけれどそれはトラウマじゃないですよね。純粋に怖いから忘れられないだけで。ミミズが人の体にニュルニュル入っていくホラーはトラウマになったはなったけれど。うーん、なんか違う。ちなみにその作品午後ローで見たはずです。

 この本の中で一番観たくなったのは悪い種子ですかね。中にある写真のローダという少女の顔が不気味。この少女が人を殺していく話らしいのですが、殺しかねない顔をしている。実際はどんな顔をしていたのかすごく気になります。映画内ではあどけないのかもしれないし。非常に残念です。

 

トラウマ映画館 (集英社文庫)

トラウマ映画館 (集英社文庫)