熊手かき

読書好きの日常

視覚に訴えるもの 「es」

 いや、何度観ても胸くそ悪い映画ですよね。もう3度見てるけどいつもそう思う。なのに観ちゃうんだ、私は。そういう性格らしいです。嫌なのに塞いだ手の間から観ちゃう人。でも、この映画実話ですからね。そっちのほうが衝撃。

 アメリカで行われたスタンフォード監獄実験を題材にドイツで映画化されたものです。ただの心理実験がエスカレートする様は人間の心理が立場に強く影響を受ける証拠。逆に言えばその立場にあると強く思い込めばそうなれる証拠でもある。

 最初のただのごっこ遊びと思ってる画面から少しずつ、でも確実に変容していく描写は恐ろしい。看守側はいつまでもどことなく陽気だ。それどころかどんなことも自分たちが試されていると思い切っている。だからどこまでも残酷。髪を剃る、殴る、裸で放置する。囚人側はただただ自分を守るだけ。主人公タレクでさえ、自分の嫌いなある装置が目の前に置かれた途端に従順になる。彼だけが恐ろしかったものが看守じゃなくてその装置だったから冷静でいられたのかも。もう1人いるけどその人は軍人さんですからね、ちょっと毛並みが違う。

 とにかくだ、嫌な気分になる最高の映画。恐ろしいものは人間だと思い知らされる映画です。確かこの作品アメリカ版もあるはず。「エクスペリメント」ですね。こっちの方がまろやかだった。だから嫌なのにがっかりしたんだ。「es」のレベルまで行こうよって。もう、言ってることめちゃくちゃですが、胸くそ悪いのに嫌いじゃないんで仕方ないです。

 

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