熊手かき

読書好きの日常

書を読むということ 「スパイは楽園に戯れる」

 わたしは五條瑛さんが好きだ。でも、ずっと読んでいなかった。鉱物シリーズが書きにくくなったという噂を聞いてからしばらく離れていた。なぜって鉱物シリーズが大好きだったから。本を読む余裕も買う余裕もしばらくなくなったからそれもあったんですけどね。久しぶりに読んでみて思った。やっぱりわたしは五條瑛が大好きだ。

 会社と呼ばれる米国情報機関の子会社に勤めるアナリスト葉山隆は上司・エディの指示でヨハンという男を調べていた。人の言葉を分析する葉山は対象者との対話からヨハンの現状を探ろうとするがなかなか進んでいかない。一方以前会社の下で働いていた仲上は今注目の政治家、涌井からある男を探して欲しいという依頼を受ける。葉山と仲上、2人の求めた情報はやがて少しずつ繋がっていき…。

 わたしは鉱物シリーズと出会って一時期新聞のスクラップをしたことがあった。情報は砂金をとるようなもので、新聞の記事から重要な情報を浮かび上がらせることもできる。そんなような文章があってのぼせ上がったわたしはならばとやってみたのでした。もちろん、そんなこと現実にできることもなく早々に諦めたのですが。でも、このシリーズを読むと世界情勢に興味が湧いていくというか。もしもっと早く出会っていたら、わたしはそういう勉強をしていたんじゃないかと思うくらい。五條作品は切なくなる話が少なくないですね。そんなに読んでいるわけではないけれど、読んだ本はそういう傾向が強い。そんな気がします。

 わたしは涌井が好きです。だから今回は仲上に感情移入してしまった。隆が前より擦れている気がするのもやっぱり仲上と同意見。まるで読んでいなかった期間が情報戦から離れていた仲上と被ってしまったみたい。なんだろう、すごく不思議な感覚。それとも立場が変わったから感情移入する相手も変わったのかな?今まで葉山とシンクロしていたはずなのに、すごく遠くにいった感じがして寂しくて。改めて最初から読みたくなりました。そうすればこのモヤモヤの原因がわかるような気がして。でもその前に鉱物シリーズだと思っていなかった番外編も読まなくては!とも思っています。

 わたしの買い集めた本は実家、トランクルーム、家と3箇所に別れていて何がどこにあるのかわからない。引っ越ししたからにはものを増やしたくない。だから本も増やしたくないけれど、五條作品だけは買い求めようかなって思います。今回はたっくんを横に置いてずっと読みふけったし読みふけりたかった。こんな思いは久しぶりで嬉しくて。もちろん図書館に行けば読むことはできるけれど、五條作品だけはそばに置いておきたい。本当にわたしに影響を与えた作品だから。いつでも手に取れるところにあって欲しい。そんな思いが強くします。未だに革命シリーズの1巻のラストが残っているし、プラチナビーズのラストの葉山の悔しさも、スノウ・グッピーのラストも残ってる。もう何年も経っているのにそんな作品そうそうない。引っ越したら本棚整理してそういう本を揃えていこっと。

 スパイは楽園に戯れる

 

スパイは楽園に戯れる