熊手かき

読書好きの日常

視覚に訴えるもの 「ペネロピ」

 「アナと雪の女王」を観てるみたいだった。全く同じじゃないけれど、子供のためと隠されて育てられた少女。愛されていなかったわけじゃない。愛されていたからこそ、すべての困難から遠ざけたかった。魔法を解く鍵がわかっていた分、ペネロピの方が無力感に苛まれていたかもしれないけど。

 先祖の非常な行いで豚のような鼻と耳をもって生まれた少女ペネロピ。彼女の呪いを解くには同じ立場の青年と結ばれることが必要だった。一流の家に生まれたペネロピの呪いを解くため、家族は必死にお見合いを仕掛けるが顔を見た瞬間青年たちは逃げ惑う。ある日、とある青年は利害が一致する記者とペネロピの存在を世に知らしめようとする。そのために没落した一家の青年・マックスをスパイとして送り込むが、青年は偶然にもペネロピの姿を見ず仕舞い。鏡ごしの逢瀬で少しずつペネロピとの距離を縮めていく。やがて青年はペネロピの顔を見るが、ペネロピの願い、結婚することはできないと断るのだった。その夜、ペネロピは意を決し家を出て自由を手に入れるのだが…。

 最初豚の顔のクリスティーナ・リッチに違和感を覚えたものの、やっぱり地が良いからチャーミングにしか見えない。マックスが何故結婚できないと言ったのかの理由も最後には明かされます。それはマックスの最大の愛情表現だったわけですが、それがあの段階でわかるはずもなく…。でもあの出来事がなければペネロピも外の世界に出ようとはしなかったから、良かったのでしょうね。もう諦めようと吹っ切れた。母親の庇護のもとから離れた彼女は隠すところは隠すけど幸せそうで。友達までできるのだから素敵な毎日です。自分を生きていると心から思えたでしょうね。そしてその時間を知っているから、彼女は自分の答えをしっかりと出せた。

 ありのままの自分を愛せるかは愛してもらえていると思えるかでもある。最後に母親が自分のせいで呪いが解けずにいたと謝る場面がありますが、それを端的に表してますね。いや、愛していないんじゃなくて愛されないと思ってしまうことかな?その言葉はペネロピにかけられていた呪いよりはるかに重い。1番側にいる人に本当の意味で受け入れられないのは何よりも悲しい。愛されているのがわかっているから尚更。最初に「アナと雪の女王」に似てると書いたけど、エルサにはアナがいた。魔法を使えるとわかっても丸々受け止めるアナという存在がいた。その点は違いますね。ペネロピはそういう存在を自ら作っていったわけだし。自己承認は何よりも強力な魔法だ。弱った時に観ると勇気がもらえる映画です。

 

ペネロピ [DVD]

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