熊手かき

読書好きの日常

視覚に訴えるもの 「バタフライ・エフェクト」

 ずっと昔に深夜映画で観て衝撃を受けた作品です。それを録ったハードディスクレコーダーはもうどこかに行ってしまったので、午後ローで放送されたのを大事に録っておいたんですが、今回視聴。やっぱり午後ロー。ちょいちょい切られてました。

 主人公の少年エヴァンは時々記憶喪失を起こしていた。母親に連れられて行った病院で、日記をつけることを勧められ彼はずっと日記をつけている。成長し、7年間記憶を喪失しなかったエヴァン。だがその日、久しぶりに開いた日記帳を読んだ彼は失っていた過去の記憶を取り戻した。事情があり引っ越していたエヴァンは記憶の正しさを確認するため少年時代の友人を訪ねる。が、次の日知った現実は少年の時好きだった少女・ケイリーがその日自殺をしたというものだった。必ず迎えに戻ると別れた彼女を救うため、エヴァンは記憶を失う前後の日記を読み返し何度となく過去に戻るのだが…。

 はっきり言うと本当に好きな作品なのでいろんな解説を読んだから素直な感想ではありません。最大のポイント、この作品のラストシーンは本当はこの終わりではなかったというのが印象に残っています。あんまりにも暗すぎるという理由でおくらになった。でも、その本当のラストのせいで臨月の私は心配事がひとつ増えたんです。基本、時間を戻せるのは記憶を喪失している時だけ。だからあのラストは矛盾しているんです。本当のラストは本当に記憶がない時に遡っている。正確には記憶がある人はいるそうなのですけれど。ここネタバレなので書けないので、気になる人はネットで調べてください。すぐ出てきます。その話を読んでから、毎週の検診で大丈夫ですよと言われるたびにホッとする。そう考えると、ケイリーはもちろんの事誰も傷つけたくないというエヴァンですが、バッドエンドでは母親を傷つけることになるんですよね。だから、映画版のラストが一番なのかもしれないです。

 一番悲惨なケイリーに一番幸せなケイリーの話をするエヴァンが納得いかない。過去に戻ってやり直せるのだからそっと戻れば良いのに。どう考えても地獄にいるケイリーになぜあの話をしたのかだけ納得がいかないです。もちろん、あの話があってさらに最悪の事態になったからこそエヴァンがあのラストを選択したのはわかるんですけど、なんの慰めになるんだろう。贖罪の気持ちだったんだとは思うけれど、逆効果だよな〜。初見の時はなんとも思わなかったけれど、今観ると不思議です。

 誰かを幸せにする。そのための最善の選択なんて本当は誰にもわからない。今作のラストだって、ぱっと見は幸せだけれどケイリーが本当に幸せなのかなんてエヴァンにはわからない。なぜって、2人の人生は交わらないから。もし、あの時エヴァンが日記を読み返さなかったら。ケイリーは迎えに来なかったエヴァンを恨んでもささやかな幸せを手にしていたかもしれない。決して順風満帆ではないし幸せではなかった。でも、久しぶりにエヴァンに会ったあの笑顔は本物だった。あの時迎えに来たんだとエヴァンが言っていたら、それが一番の幸せだったかもしれない。そんな気が少しします。

 切られてたから今作品はやっぱり購入しよかな。何度見ても切なくて優しい作品です。