熊手かき

読書好きの日常

視覚に訴えるもの 「ぼくのエリ 200歳の少女」

 スウェーデン版の映画です。アメリカ版は「モールス」って名前ですよね。北欧の映画をリメイクするのが流行っていたのかな?アメリカ版はホラー恋愛映画とあるけど、スウェーデン版は完全に淡い恋愛映画です。

 いじめられっ子の少年・オスカーの隣に引っ越してきたとある親子。ある晩、中庭で1人過ごすオスカーの元に少女・エリがやってくる。近づかないでという少女に惹かれていくオスカー。そしてゆっくりとオスカーとの距離を縮めていくエリ。だが彼女は普通の少女ではなくヴァンパイアだった。生きるために血を吸う彼女。オスカーはそれを知ってもエリから離れられず、彼女の窮地を救うのだった。

 北欧人だからと一概には言えないだろうけど、オスカー役の少年の色の白さに驚いた。髪もまつげも金髪だから、まるで天使みたいで。逆にエリは肌色は白いものの髪の色も目の色も暗い。真逆の存在だから惹かれあったように見えて凄く綺麗だった。一緒にいると違う存在だという現実がまざまざと見せつけられるようで。エリが禍々しいわけではないです。ただオスカーの純粋さというか優しさがその白さで引き立たされているようで。何があっても彼は穢れないそんな気にさせられる。

 そしてエリを保護していた男性。彼はエリのために血液を集めていたけど失敗し、エリのために命を落とす。「あの少年に会わないでほしい」と言ったセリフがあるのですが、彼もオスカーと同じ立場にいたんでしょうね。時は残酷で、人間の彼は老いていくしかなかった。愛した少女の心変わりを止められるわけもなく。今まで失敗しなかったのに引っ越してから失敗続きなのはオスカーを気にしていたからかな?嫉妬が彼を焦らせた。でも、エリにとっては彼だって大切な人だっただろうに。やっぱり彼にもオスカーは輝いて見えたのかもしれない。エリと長くいた分、彼の闇も深まっていただろうし。

 最後はスプラッターありでしたがハッピーエンドです。でも長く続くエリの人生でオスカーと本当の意味で蜜月を続けられるのはどれくらいなんだろう。そう考えると少し悲しい物語。エリがオスカーをヴァンパイアにするとは考えづらいですからね。2人はきっとお互いに守り守られる関係で生きていくんでしょう。オスカーはエリの命を、エリはオスカーの純粋さを。時がふたりを分かつまで。