熊手かき

読書好きの日常

この場所ではわからない現実。現実の中にある真実

 

 病院で待ってる間にずっと読んでた本。石井光太さん2冊目です。日本の少女やシングルマザーの貧困の本も読んだことがある。そのきっかけは石井光太さんの本を読んだからかもしれないな〜と今思った。
 世界の貧困をスラム、路上生活、売春の3章に分けて綴った本です。今回びっくりしたのが、自分の中で同一視してたスラム生活者と路上生活者が違うカテゴリーにいたことでした。よくよく考えたらスラムは街なのだから当たり前なんですよね。何を勘違いしてたんだろう。それぞれの各章で住宅事情、家族事情、職業事情が語られています。読んでみると、路上生活者の職業事情が悲惨で優しいことに驚かされます。物乞いは喜捨でギリギリの生活を送っているそうです。もちろんそのために障害者にさせられりする現実もあります。喜捨だってする方は宗教上の理由もあったりするので自分のためではあるのですが、日本に比べて随分憐憫の情が厚いのだなと思い知らされました。
 また驚いたのが、日本で出稼ぎ売春までした女性たちが本国で苦難の道を歩む場合があるということです。稼いだ大金は親戚に吸い尽くされ、自分の家族は貧しいまま。なのに、彼女たちは汚いものと蔑まれることがある。スラムのおばさんが彼女たちは偉いんだとかばっている姿にジーンときちゃいました。
 私の目から見ればとてもしあわせとは言い難い生活。でも、彼らにとっては現実で、時にしあわせを感じ笑顔さえ浮かべる。しあわせなんて当人がどう感じるかでしかない。頑張れなんて言葉はいらない。大切なのは生きろ!という言葉だけなのかもしれない。親を眼の前で惨殺されて、自分も殺される悪夢から逃れられない少年は死を待つだけとわかりながらシンナー中毒になっていく。著者は何とかして助けようとするけど、彼にとっては悪夢を振り払ってくれるシンナーの方がしあわせをもたらしてくれるんだ。複雑。貧困の中でも笑顔は生まれるなら、生きてさえいればいい。この世の中に住む1人でも多くの人が今日安らかに寝、明日朗らかに目をさますことができますように
 
絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

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